BINOS vol.15(2008)

BINOS vol.15目次


<論文>
こまたん:平塚市におけるコムクドリの動向について-渡り中継点における長期滞在の意義を考える-
【要約】
 2005年の春から2007年の秋までの間に平塚市に現れるコムクドリの調査を行なった結果、次のことが明らかになった。
1 コムクドリが金目川で見られる期間は前期は4月中旬から5月中旬にかけての約1ヶ月、後期は7月上旬から10月の上旬にかけての約3ヶ月。後期の方が数は多く、8月下旬から9月中旬がピークであった。
2 観察期間中の飛来個体数の最大は、前期では2006年5月6日の75羽、後期では2006年9月4日の920羽が最大であった。
3 塒は5ヶ所替わったが塒入り前集合地と全ての塒との直線距離は2.3km以内であった。
4 平塚市でのコムクドリの一日の行動パターンは日の出前後に塒を飛び出し、夕方の塒入り集合地(川)で一時滞在してから塒から約6.3km離れた平塚西部丘陵の限られた場所付近で昼を過ごす。15:00頃塒入り集合地に移動集合し採食、水浴び、羽繕いを行いその後、日の入り近くになると塒に飛び立つ。塒入りの終了は2006年8月10日では日の入り7分後、動きがやんで声が聞こえなくなったのは日の入り22分後だった。行動する順序や時間帯および範囲もほぼ同じことを毎日繰り返していた。
5 ムクドリとの行動は塒入り前集合から塒までともに行動していたが、群れとしてはコムクドリは一群をなしていた。他の時間帯にムクドリと共にいる場合もあるが稀であった。
  朝、塒からの飛び立ちはコムクドリはムクドリと一緒に飛び出すが、すぐにコムクドリだけの群れを形成する。
 夕方、塒入り前集合地から飛び立つ時にはムクドリとコムクドリは混群で飛び立つが、塒周辺に現れる時にはムクドリとは分かれてコムクドリだけの群れを形成していた。
6 朝、塒を飛び立った群れは全て西方向に位置する平塚西部丘陵に向かう。昼間、塒より東側の平塚市街地でコムクドリを確認することは出来なかった。
7 採食について
 ・朝の採食
  確認された食べ物はいも虫、トサカフトメイガの幼虫だった。夕方よく食べるエノキの実を食べるのは確認されなかった。
 ・昼間の採食
  確認された食べ物はクマノミズキの実、ミズキの実、ウワミズザクラの実、サンゴジュの実、等でクマノミズキの実については青い実を食べていたものも観察された。いずれも果実ばかりであった。
 ・夕方の採食
  エノキの実、トサカフトメイガの幼虫が主だった。他には種は特定できなかったが空中を飛んでいる虫と緑色のいも虫も採食していた。
8 飲水行動は雨の日を除いて全ての観察日に観察された。
9 水浴び行動は雨の日(2007年では2日間)を除いて全ての観察日に観察された。昼間に間欠的に雨が降った日でも集合時に雨が降っていない時には水浴びが観察された。
10 塒入り前集合地より塒までの移動時間と飛行速度は直線距離約2.1kmを約3分で飛行した。時速約42kmで飛翔したことになる。
11 秋に多数のコムクドリがこの地に現れるようになったのは2001年秋から2005年秋に見つけるまでの間である。

藤井 幹:神奈川県周辺におけるワカケホンセイインコの繁殖環境について
【要約】
 神奈川県周辺の10地域20箇所において、ワカケホンセイインコの繁殖環境を調査した。本種は明るい開けた環境を選択し、自然の樹洞やキツツキの開けた穴、巣箱、建造物の隙間で繁殖を行っていた。繁殖地では、ムクドリ、アオゲラ、アオバズクとの競合が確認されたが、いずれも在来種を圧倒するものではなかった。

藤井 幹:羽根から見たハシブトガラスとハシボソガラスの識別について
【要約】
 近似種であるハシブトガラスとハシブトガラスについて、羽根からの識別を試みた。識別のために着目したのは体羽と尾羽で、体羽は外部形態から、尾羽は計測値から識別を試みた。その結果、体羽は羽弁と綿状羽枝の色の違いによって識別が可能と考えられた。尾羽については、両種で計測値が重複しているものの、230mmを超えるものがあればハシブトガラス、T6以外で200mmを下回るものがあれば、ハシボソガラスとすることが可能と推測された。

<観察記録>
湯川廣司:川崎区の工場跡地におけるコアジサシの繁殖の観察
湯川廣司:多摩川河口におけるセグロカモメの行動観察-2
小野 武 ・西田トミ子・市川ヤエ・山口恭弘:小田原地区におけるヒヨドリの渡り(南下)の観察記録
松井慎吾・佐藤義郎・中村利和:大磯町照ヶ崎海岸における白いアオバトの観察記録
後藤裕子:横山丘陵緑地における鳥たちの春の渡り
濱 伸二郎:藤沢市内で観察された稀少渡来種3種の報告
境 孝彦・平田寛重:藤沢市江の島でのケアシノスリとフルマカモメの記録
片倉義人・平田寛重:平塚市内陸部で観察された希少渡来種について
藤井 幹 ・佐山裕史:境川を通過するワカケホンセイインコの個体数及び飛去時間の変動
二子山鳥類調査チーム:三浦大山林道センサス調査におけるウグイスの出現状況 <調査記録>
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県寒川町のサギコロニー調査
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県におけるカワウの分布状況(第7報)
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県における定線センサスの結果(2007年)

<その他の記録>
日本野鳥の会神奈川支部:多摩川河口の自然を考えるシンポジウムの記録

<支部活動>
2007年の神奈川支部行事
2007年の保護研究部の活動

<雑録>
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執筆者紹介
後記

編集委員:秋山幸也・東 陽一・藤田 薫・畠山義彦・浜口哲一・石井 隆
英訳・英文校閲:石田スーザン
表紙イラスト:コムクドリ(作画・デザイン 秋山幸也)