BINOS vol.14(2007)
























<論文>
こまたん:大磯町照ヶ崎海岸付近の森で泊まるアオバトの確認
 【摘要】
 大磯町照ヶ崎海岸、JR大磯駅周辺、平塚西部丘陵周辺で2004年、2005年、2006年の3年間行なった結果、下記のことが明らかになった。
1)アオバトのお泊り行動
 アオバトの繁殖期における生態として、繁殖地から遠く離れている海水吸飲地付近で塒行動を行っている個体が存在し、繁殖地から遠く離れた海水吸飲地でも早朝に海水吸飲を可能としていることがわかった。
・JR線路越えて飛行するアオバトの羽数を入り/帰りそれぞれ別々に分刻みで記録し、それぞれの累計差により前日から海側に存在していた個体つまりエリザベスの森に塒をとっていた個体の存在がわかった。
・同時に照ヶ崎でも飛来を記録することで、JR線路で把握できない塒利用羽数も把握できた。
・エリザベスの森を塒にしていた個体は、今回の調査では最大96羽だった。
2)照ヶ崎への早朝の飛来の仕方
 照ヶ崎への早朝の飛来の仕方に一定の特徴が見られた。
・日の出時刻と連動して、日の出15分前~5分後程度に飛来を開始する。
・手前にあるエリザベスの森に一旦入ってから、2~3倍程度のより大きな群れを形成して照ヶ崎に飛来している。
3)日の出、日の入りに連動した活動
 照ヶ崎、大磯駅周辺、湘南平周辺、平塚西部丘陵、ヤビツ峠、堂平 各地での活動開始、活動終了時刻を日の出、日の入り時刻からの経過時間で整理すると、アオバトの活動時間は日の出前後から日の入り前後までであることが確認できた。
・活動開始は日の出13分前から5分後であった。
・活動終了は日の入り9分前から9分後であった。
4)間接的調査方法の考案
 塒の存在を確認する方法として、直接塒を探索・確認する方法を取らず、周囲での間接的な羽数のカウントによりその存在を把握することができた。


こまたん・加藤千晴:神奈川県自然環境保全センターに保護されたアオバトの観察記録2例
 【摘要】
 2006年8月29日~9月30日(33日間)の間、神奈川県自然環境保全センターに保護されたアオバトを観察して次のことが明かになった。
1 果実(液果)を与え、食塩水を与えると水道水(真水)を与えた時に比べあきらかに糞に出てくる水分量が少なくヨウシュヤマゴボウのように水分量が多い果実を与えた場合は大きな違いが出た。
2 ハト餌のマイロ(4×3.5)については糞の中に未消化で原形のままでてくるものが何回か見られた。
3 水分量が少ないハト餌のみ与えた場合には水道水と食塩水の選択(嗜好)についての実験から水道水を好んで飲んでいるようだった。
4 アオバトは果実を食べてからおよそ2時間後に種子を糞として排泄しはじめた。
5 粉砕されない果実種子の排泄順序は食べたものが順次そのまま出てくるのでなく筋胃の中に多少以前のものが残り、後日混じって出て来ることもあった。
6 食べた果実の色素が糞に出てきた。
7 アオバトはミズキの実を確認するかのように嘴を開き、実を軽くくわえ小刻みに噛む様な動作をする。嘴にくわえてそのまま食べる実と食べずにわざと落とす実があって、アオバトは実を選んで食べているように見える。
8 初列風切羽P8の凹みがないものが幼鳥の特徴であるがこの個体にも凹みは見られなかった。
9 観察者がアオバトの入っているカゴ前面に行くとアオバトの動きが止まり、止まり木でジッとこちらを見て動かないが、観察者が視界から消えると又激しく動き出した。
10 日の入り前にアオバトは止まり木などでうずくまり、目をパチパチしはじめるなどのまどろむ仕草を見せた。
11 アオバトの筋胃の筋胃粘膜面はキジバト、ドバトよりも硬くて柔軟性がなく筋胃粘膜面のみで筋胃内の形状を形作っており筋胃粘膜面の硬さから内部形状(空間)はある一定以上には狭くならないのではないかと思われる。
12 アオバトの腸はキジバト・ドバトに比べ長かった。
13 キジバト・ドバトにある盲腸がアオバトには無かった。


戸井田伸一・加藤ななえ・安井啓子:等々力緑地におけるカワウのねぐらについて
 【摘要】
 神奈川県川崎市中原区にある等々力緑地におけるカワウのねぐらについて、個体数変化を中心に調べた。
 ねぐらの個体数は、4月から9月まで、100~200羽程度で推移していたが、10月頃から急激に増加し、12月まで300羽を超えていた。その後年明けの3月頃まで100羽程度まで減少しており、関東地方の内陸部にあるねぐらと同様の傾向を示していた。
 ねぐら入りの方向は、多摩川上流からの飛来が平均46.3%と最も多く、多摩川下流からの飛来は平均16.8%、その他は平均32.9%であり、季節よりも調査日による変動が大きかった。
カワウがねぐら入りする時間は、冬期は午後3時頃、夏期は午後5時頃から始まり、日没頃に終了していた。
 このカワウ個体数の増加する時期はアユの産卵期と一致しており、産卵期のアユを狙って多数のカワウが多摩川などに集まるためと考えられた。
 なお、アユが海から遡上すると共にアユ種苗が放流される3月から5月にかけては、10月頃と異なりカワウ個体数は急激に増加しておらず、等々力緑地におけるカワウ個体数の増減は、河川における魚資源の存在だけでは説明できない。
 産卵期を迎えるアユを保護することが各河川で行われているが、これはカワウの採食を妨害し、カワウの飛来を防ぐことに貢献している。近年沿岸域での水産被害も問題視されてきていることから、今後は海域におけるカワウ対策も必要となる。


田淵俊人:相模原市相模湖町内郷地区に生息するオシドリとカワウの関係について
 【摘要】
 1999年1月から2007年3月までの約8年間に渡って、相模原市相模湖町内郷地区に生息するオシドリ(旧相模湖町の鳥)とカワウとの関係について個体数の推移から両種の相互関係を調査した。結果は以下のように要約される。
1.1999年には冬季にはオシドリが観察された。しかし、同年12月に本地域にカワウのねぐらが形成されて個体数が増加するに伴ってオシドリの個体数が激減した。
2.2000年にはカワウの個体数変動が著しかったが、2001年以降はねぐらに30~50羽前後の個体数を維持するようになって安定した。しかし、オシドリの個体数は2000年3月を最後にほとんど観察されなくなった。
3.カワウが増加するとオシドリが減少する原因について考察した結果、カワウがオシドリを攻撃する証拠が得られたことから、カワウは在来の生態系に少なからず影響を与えている可能性が示唆された。


<観察記録>
湯川廣司:多摩川河口隣接工場跡地におけるコアジサシの観察-育雛中の雌と、つがい以外の雄との関係について -
湯川廣司:多摩川河口におけるオオセグロカモメのヘッド・トッシングの観察
白田 仁:ドバトの肉類採食の観察

林 啓子:秦野市鶴巻のシギ・チドリ観察記録

亀谷邦雄:神奈川県東部の内陸におけるタカの渡りの観察
藤井 幹:神奈川県におけるイワツバメの越冬記録
藤井 幹・青木雄司:イワツバメの特異的な巣の構造

藤井 幹・青木雄司:トビによる鳥類の捕獲事例の報告

森 要:巣で雛が死亡時のオオタカの行動観察記録

黒河 監:相模川におけるコウライアイサの記録

青木雄司:日中に飛翔するヤマコウモリの観察記録


<調査記録>
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県における定線センサスの結果(2006年)


<支部活動>
2006年の神奈川支部行事
2006年の保護研究部の活動


<雑録>
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執筆者紹介

後 記

編集委員:秋山幸也・東 陽一・藤田 薫・畠山義彦・浜口哲一・石井 隆
英訳・英文校閲:石田スーザン
表紙イラスト:オシドリ(作画・デザイン 秋山幸也)