1994年の自然保護活動



1.川崎市等々力緑地公園のサギコロニーの保全
2.本会刊行物の環境アセスメントなどへの引用について
3.厚木市のオオタカ生息地の保護問題
4藤沢市清水谷戸の保護問題
5.小網代の森の保護問題
6.鳥獣保護区への意見の送付について
7.真鶴半島での農薬散布について
8.丹沢の自然保護について
9.川原での猟犬訓練について

神奈川支部では、県内における鳥類の重要な生息地の保護を中心に、関係官庁などと様々な交渉をしながら自然保護活動に取り組んでいる。
ここには、1994年に支部が各方面に提出した要望書を中心に、保護活動と支部の発言を紹介したい。
その中には、本誌1号で発表された記録に基づいて提出された要望書もあり、調査活動と保護活動の結びつきを強めることも本支部の目標の一つである。


●川崎市等々力緑地公園のサギコロニーの保全

 川崎市等々力緑地公園の釣り池の中の島は、京浜地区では唯一のサギ類のコロニーとなっており、コサギ・ゴイサギの他、ダイサギの繁殖も確認されている。
 1994年2月に、釣り池の管理者がこの島の薮を切り払うという事件が起きた。支部で、公園管理事務所と交渉した結果、その刈り払いは計画的なものではなく、作業員の独断によるものと分かったが、下記の要望書を提出し、サギ類のコロニーの保全を申し入れた。
 なお、公園事務所からは、近年多くのカワウがすみつき、釣りのために放流した魚を食べて困るという意見が伝えられた。

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資料1.川崎市あてに出した要望書

                                        平成6年3月17日
 川崎市中部公園事務所長殿
 等々力緑地公園管理責任者殿

             日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

サギのコロニーの保全について(要望)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 貴下の管理されております等々力緑地公園の池の島には、サギ類が集団繁殖しており、京浜地区に残された唯一のコロニーとして私達の会でも注目してきました。この島で繁殖が記録されているのはコサギ・ゴイサギ・ダイサギの3種類ですが、特にダイサギの繁殖は県内では極めて貴重な例となっています。
 こうした重要な価値を持った島ですが、聞き及びますところ、最近島内の低木などがか なり伐採されたとのことで、たいへん残念に思っております。こうした事態を二度と起こさないようお願いするとともに、今後もサギ類の繁殖が可能なように環境管理に充分ご配慮を頂きたく、下記の点について検討をお願いいたします。

1.中の島をサギのコロニーのある聖域として位置づけ、鳥類保護を最優先して管理を行ってください。
2.今年の繁殖期の状況を把握したうえで、秋には低木の補植などによって、以前の環境条件が復活するよう
 対策を考えてください。
3.昨年までの状況では、島に近い岸にも釣人等が立ち入っており、サギ類に悪影響が見られました。
 繁殖期(4月~7月)の間は島に近い部分を立ち入り禁止 にする処置をしてください。
4.繁殖期には島に近い場所での工事を避けてください。
5.公園全体に多自然型の公園となるように工夫をしてください。


●本会刊行物の環境アセスメントなどへの引用について

 以前からしばしば、本会の刊行している鳥類目録、BINOSなどに掲載された情報が、各種の調査などに利用、引用されることがあった。
 もちろん研究論文などに引用されることは望ましいことなのだが、環境アセスメントを始めとする調査会社が行政などから受託して行う調査の場合、その引用にはいろいろの問題点がある。
 一つは、その調査が特定の開発を前提としており、我々の情報が、その開発を助けるような使われ方をする危険があるということである。
 環境アセスメントの手続きの中で言えば、我々は、開発事業者が準備した環境影響評価書案を市民の立場から評価するための基礎資料として情報をいかしていきたいと考えている。
 そうした意味で、鳥類目録第2集では環境アセスメントへの引用を断る旨を明記し、またBINOS1号では引用願の書式を示し、引用の場合必ず事前許可を求めるようにした。
 こうした対策が最善かは今後も検討しなければならないが、情報管理の問題は今後も支部として取り組んでいきたい重要な問題である。
 こうした引用の問題について、1994年は県および建設省と若干のやりとりがあったので記録しておく。
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資料2.神奈川県に提出した抗議文

                                              平成6年3月18日
 神奈川県知事 長洲 一二殿
               日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

本会著作物の環境アセスメント評価書案への無断引用について(抗議と要望)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より環境行政へのご尽力に感謝しております。
 さて、本会では県内の鳥類の生態についての調査を進めており、平成3年5月に「神奈川の鳥1986ー91」と題する神奈川県の鳥類目録を刊行しました。
 この目録は、県内の鳥類についてのデータベースになるものと自負しておりますが、会員のボランタリーな努力を集積した刊行物という性格上、その利用については刊行者である本会の意向を十分に尊重して頂きたいと考えております。
 特に環境アセスメントの評価書作成のためにこの目録を用いることは、同書4ページに「アセスメント調査などで無断で引用することは厳に慎んで頂きたい」と明記してあり、この意向は県の環境アセスメントの担当課にも文書でお伝えしてあります。
 これは、私たちが市民の立場で評価書案に対して意見を述べる時にこそこの目録を役立てたいと考えているからです。
 ところが、今回神奈川県から公表されました「第2東名自動車道事業」および「厚木秦 野道路(一般国道246号バイパス)事業」の評価書案をみますと、同書が引用され重要な情報源になっています。
 これは、本会の意向に著しく反することであり、厳重に抗議するとともに、下記の内容について早急に文書での回答を求めます。

1.本会の著作である「神奈川の鳥1986ー91」を無断で引用したことについて経緯と考え方を明らかにしてください。
2.評価書案から本会の著作物を引用した部分を削除してください。
3.今後も、同様な事態が起きないよう、県として本会の著作物の引用については必ず事前の了解を得るように
 約束して下さい。
 また事前の了解が必要であることを関連事業所、調査会社等にも知事名で周知してください。

                                             以上

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資料3.抗議文に対する県からの回答

                                                平成6年4月26日
 日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一殿
              神奈川県都市部 都市計画課長 岡島康夫

環境影響予測評価書案への著作物の引用について(回答)

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 
 日頃、県行政の推進につきましては、多大なご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、平成6年3月18日付けで貴支部から標記のことについて「抗議と要望」を頂きました。
 「神奈川の鳥1986-91」からの引用につきましては、1992年12月16日付けで貴支部から事前の了承を得べき旨の申し入れを頂き、また、当該文献中にも同様の趣旨の記載があるにもかかわらず、環境影響評価の協力者であります建設省横浜国道工事事務所や調査受託業者への周知不徹底から、そのような手続きを経ることなく引用する結果となりましたことについて、深くお詫び申し上げます。
 「第二東名自動車道事業」及び「厚木秦野道路(一般国道246号バイパス)事業」の環境影響予測評価書案は、神奈川県環境影響評価技術指針に基づき作成しておりますが、同指針によれば、動物・生態系の予測、評価を行うための動物生息状況調査については、現地調査や既存資料の収集によって行うべきものとされています。
 したがいまして、今回の調査でも現地調査はもとより、既存の文献を用いて出来るかぎりの詳細な調査を行うため、「神奈川の鳥1986-91」を他の文献とともに引用させていただいたものです。
 環境影響評価を実施するためには、文献による調査は必要不可欠なものであり、今後は 貴支部からの申し入れを徹底させるように努めてまいりますので、引き続きご理解、ご協力を賜りますようお願いいたします。

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資料4.建設省相武国道工事事務所からの書簡
 建設省の工事事務所から、国道の建設に関わる環境アセスメント調査で、本会の刊行物の引用をしたい旨の打診があった。
 それに対して、本会の趣旨を説明した上で、BINOS1号の引用願いの書式を送ったところ、下記の返答があった。

                                            1995年4月4日
 日本野鳥の会神奈川支部 浜口哲一様
                  建設省相武国道工事事務所 (担当)

 先日は私どもの依頼に対して、早急な対応の上、「引用願い」等の書類を送付を頂きま して有り難うございました。
 「鳥類目録」の引用につきましては「野鳥の会の刊行物」についての本来の目的また「引用願い」の提出理由について拝読させて頂きました。
 ご存知の通り、「神奈川県環境影響評価技術指針」によれば、動物の予測・評価を行う ための動物生息状況調査については現地調査や既存資料の収集によって行うべきとされており、「神奈川の鳥」も他の文献とともに引用を考えていたのですが「野鳥の会」の本来の目的にそぐわないとのご指摘ですので、引用はしないことと致しました。
 なお、今後ともご理解とご協力をお願いいたします。


●厚木市のオオタカ生息地の保護問題

 前号で報告したように、厚木市荻野のオオタカ生息地の保護問題については、1993年度に厚木市と交渉を行い、1994年度に市が委託調査によって生息状況の把握を行うことになった。
 1994年度には、その調査結果をふまえて、オオタカの保全策について検討する委員会が組織され、浜口支部長が委員として参画した。現在、その答申をふまえて市が対応を検討している段階である。
 1994年には、荻野とともに別地区にもオオタカが繁殖していることが発見され、つきのわの会などが保護運動に立ち上がった。本会でもその動きに呼応して下記の要望書を提出した。なお、同趣旨の要望書を神奈川県知事にも提出した。
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資料5.厚木市に提出した要望書

                                                平成6年7月15日
 厚木市長殿
            日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

厚木市上古沢付近に生息するオオタカの保護について(要望)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より積極的な環境行政を推進さ れていることを感謝しております。
 特に、昨年繁殖が確認された貴市荻野のオオタカの保護については迅速な対応をとって頂き、ありがとうございました。
 さて、本会が入手した情報によりますと、本年5月に厚木市上古沢において、オオタカ の営巣が確認されました。
 営巣地は飯山白山森林公園と七沢森林公園をつなぐ緑地に位置し、典型的な里山の環境を残している地域です。
 このオオタカについては本年度は巣立ちには至らなかったようですが、営巣活動が見ら れたことは確実であり、巣の大きさなどから見て、今後も繁殖を続ける可能性は十分あると判断されます。
 また、現地は現在計画中の厚木秦野道路の森の里インターの近くに位置し、都市計画道 路船子飯山線の予定路線上にあたっています。先に公表された厚木秦野道路の環境アセスメント評価書案にはこのオオタカの繁殖はふれられておらず、調査が不十分であったものと判断されます。
 こうした状況をふまえて、以下の点についてご検討を頂きたく要望いたします。よろし くお願いいたします。

・白山飯山森林公園から七沢森林公園、さらに荻野の営巣地を含む一帯をオオタカの保護区として位置づけ、
 数年度にわたる綿密な調査を行った上で、広域的な環境の保全策を立案してください。
・厚木秦野道路に関する環境アセスメントの見直しと、それに基づく道路計画の再検討を国および県に求めてください。

                                                    以上


●藤沢市清水谷戸の保護問題
 藤沢市川名緑地の一画にあたる清水谷戸には良好な谷戸の環境が残されてる。
 しかし、谷戸を縦断する道路計画があるため、地元の川名清水谷戸の自然を愛する会の要望で、下記の要望書を藤沢市長に提出した。
 また、神奈川県知事に対しては、トラストみどり基金を活用して川名緑地全体の保全をはかってほしい旨を要望した。
 なお、現地の鳥類については、本誌1号の沼里和幸氏の論文を参考資料として添付した。
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資料6.藤沢市長に提出した要望書

                                            平成6年7月15日
 藤沢市長殿
              日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

藤沢市清水谷戸の環境保全について(要望)

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より積極的な環境行政を推進さ れていることを感謝しております。
 さて、周知の通り、貴市川名緑地一帯は市街地に残された貴重な自然として市民の憩いの場になるとともに、
 多くの野生動物の重要な生息地となっています。
 川名緑地の一画に位置する清水谷戸の鳥類について、本会会員の沼里和幸氏が1年間にわたる綿密な調査を
 実施し、その結果を論文として発表しました(「藤沢市清水谷戸の鳥類群集」BINOS第1号所収、別紙コピー参照)。
 この論文によりますと、清水谷戸では年間を通じて47種の鳥類が記録され、この緑地が多くの種類の生息地に
 なっていることが明らかになりました。
 また、斜面の森林の部分だけでなく、谷戸の湿地の部分が、森林性の鳥類の採餌場所と してもよく利用されており、
 特に越冬期の採餌環境として重要であることが明らかにされました。
 このことは、この緑地の保全を考えた時に非常に重要な事実であると思われます聞くところによりますと、この谷戸を
 縦断する道路の建設計画(都市計画道路横浜藤沢線)があるとのことですが、道路で緑地を分断することは、
 そこに生息する鳥類にとっても大きな影響を与えることが予想されます。
 また、先述した調査からすれば、谷戸の湿地を保全することが、この緑地の鳥類相の維持のために重要であると
 思われ、地上部に道路を通すことは、それに反する結果につながると予想されます。
 そこで、以下の点について、ご検討頂きたくよろしくお願いいたします。

・道路計画を再検討し、湿地と斜面林を含む生態系全体の保全が可能な方策を探ってください。
・川名緑地全体の自然の保全を図ってください。 以上


●小網代の森の保護問題
 三浦市小網代の森については、地元の団体を中心に長年にわたって保護運動が展開されてきた。
 当初予定されていたゴルフ場の建設は断念されたが、保護団体が求めている全域の緑地保全については、現在も予断を許さない現況である。
 神奈川県自然保護協会からの要請で下記の要望書を提出した。
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資料7.神奈川県知事に提出した要望書

                                                   平成6年7月15日
 神奈川県知事殿
               日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

三浦市「小網代の森」の全域保全について(要望)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より積極的な環境行政を推進さ れていることに感謝しております。
 さて、三浦市小網代の森林(通称小網代の森)は三浦半島に残された数少ない大規模緑 地であり、しかも一つの水系として河口から源流までの全域が残されていることに大きな価値があります。
 森林・湿地・干潟という変化にとんだ環境が見られることは、多様な動植物相を支える要因となっています。
 鳥類ではフクロウ・エナガなどの森林性の種が生息し、また神奈川県では希少なアカコ ッコの観察例もあります。
 干潟と湿地にはキアシシギなどのシギ類、カワセミなどが生息しています。
 当地は、県民が自然に親しむ場所としても重要で、探鳥地50選に選定されているほか、 アカテガニ・トンボ類などの小動物を観察に、四季を通じて多くの人が訪れています。
 こうした貴重な自然は全域を保全してこそ、後世にその価値を損なうことなく伝えることが可能だと考えられます。
 特に鳥類においては、緑地の面積が小さくなると、繁殖する鳥類の種類数が減少することが確かめられており、緑地の一部を保全するだけでは、その意義が小さなものになってしまいます。
 幸い神奈川県には「かながわトラストみどり基金」の制度があり、今までにも大きな成 果を上げておられます。
 その制度を活用してこの貴重な森を守って頂きたく、下記の要望をいたします。

・「かながわトラストみどり基金」を利用して、「小網代の森」全域を買い取り、その保全を図ってください。
・自然教育園の設置などの手段によって、多様な動植物相を保全し、その教育的な利用を中心とした活用をしてください。

                                                    以上


●鳥獣保護区への意見の送付について

 神奈川県内には約80カ所の鳥獣保護区が設定されている。
 鳥獣保護区は原則として10年間を単位に設定されており。
 その新設時には関係者(地元市町村・農業者・猟友会など)を集めて公聴会が開かれ、支部にも出席の要請がある。
 欠席の場合も文書で意見を提出できる。また、継続更新時には文書による意見の照会がある。
 1994年度には、観音崎鳥獣保護区・こどもの国鳥獣保護区・生田緑地鳥獣保護区・北足柄鳥獣保護区・小鮎愛護林鳥獣保護区の存続期間の更新に係る意見及び、飯山白山森林公園鳥獣保護区の指定(再指定)についての意見の照会があったので、現地の鳥類についての情報を含めてそれぞれ回答を行った。
 回答の1例を下記に示しておく。
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資料8.鳥獣保護区の存続期間の更新に係わる意見の例

                                         平成6年8月20日
 神奈川県知事 長洲一二 殿
            日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

小鮎愛護林鳥獣保護区の存続期間の更新に係る意見
平成6年8月1日付け自保第98号で通知のあった標記のことについての賛否および意見 は次の通りです。

1.賛否 賛成

2.意見および理由の要旨
  神奈川県内は近年急速に都市化が進み、鳥獣類の良好な生息地は失われる一方です。
   一方で都市化された環境に生活する住民からは、自然とのふれあいを望む声が高まっており、鳥獣類の多く
  生息する自然度の高い緑地を確保することは環境行政の重要な課題であると思われます。
  そうした施策の一環として鳥獣保護区の意義は今後ますます大きくなっていくと考えられます。
  さて、小鮎愛護林は小鮎小中学校の校庭及びその周辺が指定された鳥獣保護区で、県内では例の少ない
  公立学校の敷地の保護区です。
  こうした条件は、学校における環境教育の充実が求められている現在その実践のためのかっこうの条件になると
  思われます。
  その意味で保護区の更新に賛成します。
  しかし、この保護区の現状は鳥獣保護区としての機能が十分生かされているとはいえず、また直接の関係者で
  ある学校の教員にも鳥獣保護区であることも十分理解されているとはいえない現状があります。
  更新にあたっては、関係者に再度鳥獣保護区の意義の理解を求め、その活用を求めるべきだと考えます。
  具体的には鳥類を積極的に誘致し、教育的に活用する様々な工夫が必要です。

                                                以上


●真鶴半島での農薬散布について
 真鶴半島では、クロマツの大木を松食い虫から保護するという名目で、毎年農薬の散布が行われている。
 しかし、現地はクスノキを中心とした自然林がよく残されており、農薬の散布が鳥類を始めとする生態系に影響を及ぼすことが懸念される。
 そこで、まず下記の文書を提出して、県から情報を取得し、現地調査を行った。
 県でも林業試験場が土壌の残留農薬について調査を開始したようである。
 本会としては散布を中止する方向で県に要望を行っている。
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資料9.神奈川県林務課へ提出した文書

                                              平成6年5月26日
神奈川県農政部 林務課長殿
              日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

真鶴半島における松食い虫防除のための薬剤散布について(照会)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より神奈川県の森林環境保全に ご尽力を頂きありがとうございます。
 さて、真鶴町の県立真鶴半島自然公園内において、例年6月頃松食い虫防除のための薬 剤散布をされているように伺っております。
 環境への影響については慎重に検討された上で作業を実施されていることと思いますが、鳥獣保護区の特別保護区に隣接した地域であること、初夏の鳥類の繁殖期に散布が行われていることなどから考え、鳥類を始めとする野生動物に影響がないものか心配しております。
 実際に外傷のないトラツグミが、小鳥の森内の水場で突然倒れ、そのまま死んでしまうという、神経性の毒物の影響を思わせる例も本会会員が目撃しております。 
 そこで、今年度は私ども独自の立場で薬剤散布の影響を把握してみたいと考えました。
 つきましては、下記の点についてご教示頂きたく、よろしくお願いいたします。

・真鶴半島の自然林内の動物体内や土壌の残留農薬量について調査されているかどうかお教えください。
・また、その具体的なデータを公表してください。
・今年度の作業後に鳥類への影響について独自の調査を行いたいと考えております。
 散布作業の時期及び場所についてご教示ください。 

                                                以上


●丹沢の自然保護について

 本会では、野生のシカの問題を中心に丹沢の保護問題に取り組んでいるが、1994年度は鈴木茂也、畑俊一幹事や目良泰子会員を中心に、丹沢全域の自然保護問題についての勉強会が開かれた。
 その活動の一環として、県に下記の文書を提出し、各部局の担当者から話を聞く機会を持った。
 やまなみ五湖ネットワーク、林道建設などについて、状況の把握ができたので、今後は具体的な問題点への取り組みを始めていく予定である。
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資料10.神奈川県知事に提出した要望書

                                             平成6年9月26日
 神奈川県知事殿
              日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

丹沢山系の自然保護に関する要望
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、神奈川県内の自然保護に ついて積極的な施策をとられていることを感謝しております。
 さて、丹沢山地は神奈川県内で唯一まとまった自然度の高い緑を有し、長く県民に親し まれてきました。
 また、都市部と隣接しながらクマタカ等の猛禽類やツキノワグマ・ニホンカモシカを始めとする大型の哺乳類が生息する多様な生態系が存在する環境が残っています。
 しかしながら大気汚染が原因と指摘されているブナ・モミの立ち枯れや、天狗巣病の流 行やシカの採食圧などの影響によるスズタケの枯死に代表されるように一見豊かに見える自然もバランスが大きく崩れていることは周知の事実であります。
 このような状況下、平成6年6月に林務課より「かながわ森林プラン」が公表されまし た。
 その中で丹沢に関しては比較的標高の高い範囲は原生性を維持しながら自然林を保護するとの方針が打ち出されました。
 人工林に比較し天然林は水源かん養などの機能面からまた生物の生存にとっても優れていることは明かで、ゾーニング法等に問題があるとはいえ、他地方自治体に先駆けて天然林保護を視野に入れた林業行政の指針が明確にされたことに県民として注目しております。
 他方、県及び関係自治体により「やまなみ五湖ネットワーク」計画が推進されています。
 これは丹沢周辺の人造湖をアクセス道路で結び丹沢及びその周辺を一大観光地化しようとするものと受けとめております。
 最近は林野庁の自然林保護政策等に見られるように森林の原生性を維持する目的で人の侵入を制限する方針がとられています。
 丹沢は既に登山道が四通し年間45万人の登山者が押し寄せその弊害も良く耳にするところであります。
 新たな管理体制を確率しないまま更なる人を導くことは植物の盗掘や踏荒し等が増加し自然林の荒廃を招くと予想され「かながわ森林プラン」の方針と相い入れない結果となります。
 また県営林道犬越路・神ノ川線をアクセス道路として使用する計画ですが、この付近は「かながわ森林プラン」で保護地域に指定されている上に、この路線を開通させると管理の行き届かない他の県営林道に乗り入れる一般車の増加が予想され林業施業上にも大きな支障をきたすと思われます。
 丹沢は国定公園であり県民の貴重な財産です。
 単にドライブを楽しんだり日常の生活を 野外に移しただけの安易な自然とのふれあいのために残された大切な自然を破壊することなく、人と自然の関係を学習できるような自然教育の場、憩いの場として良好な自然を保ったまま後の世代に引き継ぐことが我々に課せられた使命ではないでしょうか。
 現在丹沢大山自然環境総合調査が自然保護課により行われており、平成8年度に結果がまとめられると聞いております。
 現在実施または予定されている環境を大きく変えるような工事は一時凍結し、調査の結果を踏まえ自然保護を十分配慮に入れながら関係各課で協議の上県民の納得するような公園利用法を再検討していただきたいと考えます。
 当会でも丹沢の保護に関して更に検討いたしたく下記の件等に関して各課担当者の方に同席していただき早急に話し合いの機会を作っていただけるようお願い致します。


・「やまなみ五湖ネットワーク」計画で現在までに計画、決定されている観光施設、公園 、施設、アクセス道路の
 整備などの具体的な内容を明らかにしてください。

・県営林道犬越路・神ノ川線の使用予定計画(一般車の乗り入れの可能性)及び整備計画を明かにしてください。

・「かながわ森林プラン」に関して山間部における保護の具体的な内容を明らかにしてください。
 またこれまでの施業計画との関連性を教えてください。

・県営林道の現在の管理状況(施錠、設備、林業業務外等)及び計画実施予定の管理法を明らかにしてください。

・「やまなみ五湖ネットワーク」と「かながわ森林プラン」の関係(優先順位等)を教えてください。

                                                          以上


●川原での猟犬訓練について


 小田原市在住の頼ウメ子会員等から、酒匂川のコアジサシの営巣する中州で繁殖期に猟犬の訓練をする狩猟者がいるとの情報が寄せられ、下記の文書で県に善処を要請した。
 県では、鳥獣保護員など関係者にこの内容を伝えてくれたとのことである。


資料11.県自然保護課長に提出した要望

                                           平成6年12月15日
 神奈川県環境部自然保護課長殿
               日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

酒匂川・相模川における野鳥繁殖地での猟犬訓練の禁止について(要望)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より積極的な環境行政を進めておられることに感謝しております。
 さて、酒匂川と相模川では四季を通じ多くの野鳥が観察されます。
 中でも人の立ち入りにくい中州は、野鳥の繁殖地として利用される重要な場所になっています。
 特に砂礫地の中州は、「種の保存法」において国内稀少種に指定されたコアジサシの神奈川県における主要な繁殖地となっていることはご存知の通りです。
 当会でも長年両河川の野鳥の繁殖の観察を続けてきました。
 酒匂川においては平成5年度より県土木部の協力を得て、野鳥の繁殖に利用されている中州への立ち入り自粛を呼びかける看板を設置し、その保護に務めてまいりました。
 しかしながら、最近、狩猟免許所持者による猟犬の訓練が野鳥の繁殖中の中州を使って頻繁に行われるのを見かけるようになりました。
 これは中州に放した猟犬に抱卵・育雛中の成鳥を追わせる行為で、成鳥はもとよりその卵や雛の保護に関して配慮があるようには見えません。
 平成6年度には酒匂川におけるコアジサシの繁殖は壊滅状態でしたが、その一因として前述の行為の繰り返しが大きく影響していると考えています。
 野鳥にとって繁殖期のストレスは、繁殖行為の放棄につながるからです。
 近年の急激な都市化により環境が悪化する中、今後両河川は神奈川県内で野鳥の繁殖地として更に重要な地位を占めていくと考えられます。
 該当地域は銃猟禁止区域に指定されていることを鑑み、下記の件を要望します。

・狩猟免許所持者に十文字橋より下流の酒匂川、戸沢橋から昭和橋の相模川において野鳥の繁殖シーズン
 (4月~8月)に中州での猟犬の訓練を行わないように指導を徹底してください。
・鳥獣保護員が前述の行為を発見した場合に、厳重注意するように、鳥獣保護員への指導を徹底してください。

                                            
                            以上