BINOS vol.13(2006)

<論文>
森 要:藤沢市に生息するオオタカへの開発事業の影響
 【要約】
 藤沢市のオオタカ営巣地では大規模開発があったが、オオタカ検討会の答申に基づく対応の結果、オオタカの行動圏は移動したが、その後も継続的に繁殖している。オオタカが生息する、森林、農耕地、草地により構成されるモザイク状の自然環境は悪化しているが、営巣林の環境保持とそれに接する草地、農耕地との長い境界線が保たれており、それに伴うその周辺での野鳥の多さがオオタカの継続的な繁殖を可能にしていると考えられる。

佐々木祥仁・ニノ宮秀樹:山岳部におけるツミの捕食内容について-営巣林内における食痕からの知見-
 【要約】
1 神奈川県西部の丹沢山塊における2箇所のツミ営巣地にて食痕の種類と数を調べた。
2 都市部ではスズメやシジュウカラなどの小型種が餌となっているが、今回の調査ではヒヨドリ、クロツグミ、カケス、ガビチョウなどの中型種が食痕として確認された。
3 ガビチョウやヤブサメのようなブッシュを好む種から、イカルのように樹上を好む種まで、生活スタイルの異なる種を捕食している点で、都市部との違いが見られた。


小田谷嘉弥:三浦半島金田湾に渡来した大型カモメ類2005‐2006
 【要約】
 今冬の調査で明らかになったこと・発見をまとめておく。
1 ホイグリンタイプのカモメの越冬
 これまでホイグリンタイプのカモメは春と秋の渡りの時期だけに個体数が増加し、冬季には減少するとの見方もあったが、個体識別による追跡により12月から2月にかけての冬季も渡りの時期とほとんど同数の個体数が確認された。春に個体数が増えたように見えるのは同じ個体でも足の色が変化する可能性もあるから、という事も示唆される。
2 シロカモメ・ワシカモメの渡来時期の遅さ
 継続した観察により、他のカモメ類に比べ渡来時期が3カ月ほどずれている事が確認された。


佐喜真巧・黒河佐知子・鋪田光広:鳥類を用いた環境の定量的解析法の検討-相模原市周辺の定線センサスデータを用いて-
 【要約】
 我々は鳥類を生物指標として、種類と個体数から環境を定量的に表せるか検討を試みた。神奈川県相模原市周辺の様々な植被率をもつ10ヶ所の地域での調査活動から、各植被率ごとに特徴的な鳥類の出現結果を得た。これらのデータから、植被率との関係を表す点数をそれぞれの種に与えた。この点数を用いて地域固有の環境点を定めた。これらの点数および方法は、他の文献のデータにおいても有意な相関を得た。


日本野鳥の会神奈川支部:相模川水系におけるカワウの分布調査10年のまとめ
 【要約】
1 平塚市相模川河口から城山町小倉橋までのカワウ個体数を1997年5月から200 5年5月までの間に、年1回から年5回調査した。
2 個体数のピークは、2月から3月にあり、5月に向かい減少する。
3 2004年、2005年の2月はカワウ個体数が相対的に減少している。
4 2月のデータを比較すると、2000年2月をピークに2005年まで減少傾向にある。
5 各調査地域における個体数の変化をまとめた。


<観察記録>
湯川廣司:多摩川河口におけるセグロカモメの行動観察
山田文則:シラサギの塒調査(上平塚大橋の竹薮)2004~2005年
阿部 宏・宮脇佳郎:三浦市の風力発電施設におけるトビのバードストライク事例
樋口公平:神奈川県南部の繁殖期のサシバ調査記録
和田圭史・平田寛重:秦野市権現山でのホシガラスとマミチャジナイの記録
濱伸二郎:海老名市内で観察された標識を着けたムナグロ
岡根武彦:丹沢に飛来したノゴマ

<調査記録>
日本野鳥の会神奈川支部保護研究部:神奈川県におけるカモ類一斉調査の記録(1996-2006)
日本野鳥の会神奈川支部:川崎市多摩川河口付近のコアジサシ繁殖状況(2006年)


<支部活動>
2005年の神奈川支部行事
2005年の保護研究部の活動
<雑録>
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執筆者紹介,後 記
編集委員:秋山幸也・石井 隆・畠山義彦・浜口哲一・藤田 薫・松田久司

英訳・英文校閲:石田スーザン
表紙イラスト: (作画・デザイン 秋山幸也)